第6章 りんどうの唄
『――それからしばらくして、私は呪術連から解放された。呪術師になることを条件に、とあるイカれた呪術師に手立てをしてもらってね。それで高専に来たんだ』
「………」
『私が強くなきゃ、大切な人を守れない。死んでしまった兄の夢もね。だから私は、最強じゃなきゃいけないんだ』
そう言って、なまえは小さな唇を噛み締めてから続けた。
『本当は知ってたんだろ?私の術式も、身体の事も。五条は眼がいいもんな。だけど、笑えるでしょ。散々特別だ、なんて囃し立てられて、研究だなんだって身体を弄くり回されてきたのに。同じ特別でも、六眼にはとうてい敵わない。クソみたいな話さ』
そう言ったなまえの掠れた声は、僅かに震えている。五条は瞬き一つせず、墓石を見つめたまま口を開いた。
「オマエさ、前に俺に言ったじゃん」
『…なにを?』
「”自分に助ける力があることを忘れることが一番悲しい”って。俺正論嫌いだけど、アレは正直悪くないと思った」
『………』
「別に、"オマエだけ"が最強でいる必要はないんじゃない」
五条はそう言って、なまえの頭をぽん、と優しく撫でた。