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【呪術廻戦】廻る日の青

第6章 りんどうの唄






――――私の兄は、呪術師だった。

ウチの血筋は、古代アイヌのトゥスクル――即ち呪術師の血が混じっていた。にも関わらず、呪術師が随分と長い間、生まれてこなかったんだそうだ。
だから兄が術式を自覚した日、それはそれはみんな喜んだそうだ。ご先祖様の偉大な力を受け継いだんだってね。
"最強の呪術師になって、助けを待っている人達を守る"―――それが兄の口癖だった。誰にでも手を差し伸べる、人想いの、優しい兄だった。
歳は離れていたけれど、そんな兄が私は大好きだった。呪術について一生懸命勉強して、それをずっと、近くで見てきた。兄と過ごす毎日は、とても心地よかった。そんな日がずっと続けばいいと、ずっと続くんだと、信じて疑わなかった。
けれど、そんなある日、呪術連の人間がやってきた。あろうことかそいつは、兄ではなく私の手を取ったんだ。”君には特別な力がある”なんて言ってね。
本当は、自分に術式が刻まれていることには気づいていた。少し特殊な力にも。けれど。兄の最強の呪術師になるという夢の邪魔はしたくなかったんだ。同じ血筋から、二人も最強はいらないだろ。
それから私は、その特別な力とやらを研究する名目で呪術連に引き取られることが決まった。そんな私を、僻むことなく兄は言った。”俺が最強の呪術師になって、必ずお前を迎えに行く。”と。”自分がお前より優れていることを証明して、お前を取り返してやるんだ”と。”だから待っていろ”と。その言葉と笑顔に、どれだけ救われたか。
それから私は、アイヌの呪術連の研究所に連れて行かれた。朝から晩まで、それはもう地獄のような日々だった。まるで実験用のモルモット。訓練、研究、ただただそれの繰り返し。
私には、この血筋に刻まれた術式に"適応できる身体"があった。かつてこの血筋にいたとされる、使役できる呪力量が、他の人間と比べて異常な体質。これは研究でわかったことだが、身体を張り巡らせる特殊な呪力回路がそれを可能にさせているらしい。要は呪力の量が"ほぼ底無し"なのさ。この術式を使いこなす為には、膨大な呪力の量が必要でね。この家系の術式が身体に刻まれていたからといって、"使いこなす為の器"がなければ意味はない。私はその数百年ぶりに産まれた貴重な器の非検体。だから呪術連は、興味津々だったって訳さ。
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