第3章 午前0時のシンデレラ
『うん、暇だけど』
「合コンいかね?」
硝子の言葉に、なまえはきょとんとしてから首を傾げた。
『合コンって何?』
「は、合コンしらねーの!?まじうける」
アハハハ、と愉快な声で笑ったあと、硝子は合コンについて説明してくれた。
合コン、即ち合同コンパとは、初対面の男女が人数を合わせて、親睦を深めるために行う食事会(飲み会)の事らしい。
『初対面の男と食事すんの?それ楽しいの?』
「そりゃいい男がいれば楽しいんじゃね?出会いの場だし。先輩が今夜合コンやるらしーんだけど、人数足りてないらしくてさー。暇なら一緒に行こーよ」
『えー、でも私知らない男の人となんて喋れるかなぁ。相手って術師?強い?』
「非術師に決まってんじゃん!だからうちらが呪術師だってことも、勿論高校生だってことも内緒な。大学生ってことにするから。ま、見聞を広めるためって思えばいいじゃん、それにロマンチックな恋とか芽生えちゃったりするかもしんねーよ?」
『えっ!?マジで!?私にも"ローマの休日"みたいなロマンチックな恋ができるの!?』
「なんだそれ?まぁよくわかんねーけどチャンスは生かしてこーよ。最近なまえ疲れてるみたいだし、息抜きにもなるだろ、イイトコでタダ飯食えるし」
『行く!』
「決まりね。あ、五条には絶対言うなよ。夏油にも」
『え?なんで?』
「なんでも。じゃ準備して、18時に寮の前集合ね」
『うん!』
硝子と別れてからシャワーを浴びて、いつもストレートに下ろしている髪をくるくると巻いてみる。普段は化粧なんてほとんどしないけれど、念入りに色付きのリップを塗ってみたりして、気合いを入れすぎない程度に粧し込んで、部屋を出た。
寮の前では既に硝子が待っていて、高校生には見えない妖艶な雰囲気を醸し出す彼女に思わずわぁ、と声が出た。
『硝子ってほんと美人だよね、いいなぁ』
「なまえに言われても嫌味にしか聞こえねーよ」
そんな会話をしながら、いつもより粧し込んだ二人は夜の繁華街へと繰り出したのだった。