第3章 午前0時のシンデレラ
「よしよし、ストレス発散に飲みにでも行くか」
『硝子……!うん行く!』
「…はあ。それ高校生の会話じゃないぞ。硝子、なまえに酒は飲ませるなよ」
「へーへーわかってるよ夏油もなまえが絡むとまぁまぁうっせーなぁ」
硝子が面倒くさそうにそう言えば、教室の扉が開いた。担任である夜蛾が教室に入ってきた瞬間、先ほどまで騒がしかった教室がぴたりと静かになる。
その後はいつも通りに授業をこなして、あっという間に日が暮れた。
なんだか今日は朝からどっと疲れたな、なんて思いながら、なまえは女子寮への道を硝子と肩を並べて歩く。
『はぁ…』
「なまえ、今日は一段とため息が多いな」
『ごめん…あのバカに毎晩ゲーム付き合わされて寝不足でさ…寝不足って条件は同じなのに、今日も組手で一本も取れなかったし。なんで私ってこんなに弱いんだろ』
なまえは、入学初日に呪霊を祓う勝負で五条に負けた日から、罰ゲームという名目でほぼ毎日のように桃鉄に付き合わされているらしい。組手に勝てば解放してやると言われたらしいが、あの五条になまえが勝てるわけがない。無論それは、なまえが弱いからではない。なまえの体術は硝子の目から見てもなかなかのものであるし、なんたってあの夜蛾のお墨付きだ。高専に在学中の二年から四年の先輩方相手であろうと、彼女が負けることはないだろう。そんな彼女が五条に勝てない理由はただ一つ、相手が五条悟だから。五条と夏油の強さは規格外だ。卒業生のOB,OG相手にもあの二人に勝てる人間がいるかどうかなんていうレベルであって、呪術師界隈の中では五条と夏油は最強コンビと名高いのである。
「アイツに勝てるわけないって。アイツらバケモンだもん」
『…でも勝たなきゃいけないの、私はここで最強の呪術師にならなきゃいけないんだ。…罰ゲームからも解放されたいし』
「………」
そういえば、なまえは入学初日から"最強"に拘っていたっけ。何が彼女をそうまでさせているのかはわからないけれど、きっと何か理由があるのだろう。硝子はそんなことを考えながら、思い出したように口を開く。
「あ、なまえ。今日の夜暇?」