第2章 魔法にかけられて
「何にやけてんの?キモ」
『うっさいな!にやけてないし!』
「何、オマエ傑の連絡先が知れてそんな嬉しいの?」
『はぁ?だから違うってば!なんでさっきからやたら突っかかってくんの?』
「別にー」
それから五条は、ますます不貞腐れた。
『ポップコーン食べる?』
「いらない」
『あの乗り物乗る!?』
「乗らない」
『お腹すかない!?』
「すかない」
いくら話し掛けても、五条は不貞腐れたまま隣をだらだらと歩いている。先ほどからずっとこの調子だ。五条が何に対して怒っているのか、なまえにとっては全く以て理解不能だった。
『ねぇ、なんで怒ってんの』
「別に怒ってねぇし」
『怒ってんじゃん』
「ムカついてるだけ」
『え、何に?私なんかした?』
「……そういうところが余計イラつくんだよね」
ようやく答えてはくれたけれど、なんとも冷たい一言に、なまえは困ったように眉根を寄せた。
――どうやら五条は、私にムカついているらしい。
まず、いつ自分が五条の逆鱗に触れたのか考えてみる。五条が不機嫌になったのはいつからだろうか。思考を張り巡らせてみるけれど、出会ってから今まで口喧嘩をしないタイミングなど一度もなかったので、いつ何に怒ったのかなんてわかる訳がないという答えにたどり着いた。というか、そもそも、何故自分が五条の機嫌を取らなくてはならないのだろうか。せっかくの休日なのに。はじめてのTDLなのに。
それにだんだん苛立ちを覚えたなまえは、未だ尚不貞腐れた顔の五条に向かって、勢いよく口を開いた。
『教えてくれないならもういいもん!!一人で周るから!!』
拗ねた子供のような発言に我ながら恥ずかしくなって、なまえは思い切り走った。後ろから名前を呼ぶ声が聞こえたような気がするけれど、無視してとにかく人混みを駆け抜け走った。