第2章 魔法にかけられて
反論する間もなく五条はなまえの手元から、モフモフストラップがついた携帯をさっと取り上げると、ぽちぽちと操作し始めた。しばらく操作してからぽいっと返された携帯を受け取れば、☆グッドルッキングガイ五条悟☆という差出人から画像付きのメールが届いている。そういえば、硝子とは入学初日に連絡先を交換したけれど五条や夏油とはしていなかったっけ。まぁ、別に毎日嫌でも顔を合わせるわけだから連絡先を知る必要なんてあまりなさそうだけれど。でも、連絡先を知っていれば今朝のように部屋の窓ガラスを叩かれて起こされるなんて事件は起こらなかった筈だし、集合時間の打ち合わせもできた筈だ。クラスメイトの連絡先は知っておいた方が良いのだという事を身を持って学んだ気がした。そんな事を思いながら、アドレス帳のグッドルッキングガイという余計な文字とうざったい☆の絵文字を削除して、五条悟と改めて登録し直した。
「番号も入れといたから」
『あ、うん、ありがと。ついでに夏油のも教えて』
そう言えば、五条は顕著に顔を歪めた。
「は?なんで?」
『え、なんでって……クラスメイトだから?』
「俺には聞いてこなかったのに傑のは聞くの?」
『いや、アンタとは今交換したじゃん』
「俺が勝手に交換しただけでオマエから教えてとは言われてないんだけど」
『…まぁ、そうだけど…』
返答に困っていれば、五条が強めに続ける。
「別に俺のだけで良くない?」
『いや、夏油のだけ知らないのは嫌じゃん』
「…ふーん」
なんか不貞腐れた。
確かに毎日顔を合わせるわけだから聞かなくていい気もするけれど、何かと知っておいた方が便利な事には違いないのだから、なまえは構わず続けた。
『教えてくれないならいいよ、明日自分で聞くから』
「いやそれはない」
なまえには、五条の情緒がよくわからなかった。教えたくなさそうにしていたかと思えば、自分で聞くのはダメだと言ったり。散々勿体ぶった挙句五条から夏油のアドレスと番号が送られて来て、慣れない手つきで新規登録のボタンを押した。硝子に続いて、五条と夏油。アドレス帳が一気に増えて、なんだか少し嬉しくなった。