第2章 魔法にかけられて
「何、そういうのが好きなの?」
後ろから急にぬっと顔を出した五条に、なまえは思わず肩を揺らした。
『うわっ、びっくりした…急に現れないでよ』
「いやずっと後ろにいたけど」
お土産を見るのに夢中で、全く気付かなかった。なんだか恥ずかしくなって、ぷいと顔をそらす。
「案外女子っぽいトコあんだね」
『うるさいな、別に好きで触ってたんじゃないし!ていうか買い物に集中したいから後ろくっついてくるのやめてくんない!』
「あーはいはい。んじゃ買い物終わったら入り口の横ね」
ようやく五条から解放されたなまえは、初めてのお土産屋さんを片っ端から見周って心置きなく満喫してから皆のお土産を買い店を出た。自分用にも何か買おうと思ったけれど、なんだかたくさんありすぎて逆に選べなかった。あのモフモフが少し心残りだけれど、どうせあんなストラップをつけていたら馬鹿にされるだろうから買わないでおいて正解だ。そんな事を思いながら入口の横で五条を待っていれば、視界が見覚えのあるモフモフで遮られた。
『うわっ!?』
目元でふわふわと揺れるモフモフのストラップを手に持っているのは、にやけ顔の五条で。
『何、アンタそれ買ったの!?』
「うん、可愛いでしょ」
『へえ……』
五条もこういうのが好きなのかと意外そうな顔をしてみれば、彼はぐい、とモフモフを頬に押しつけてきた。
『なんだよくすぐったいなっ』
「早く受け取れよノロマ」
『え!?』
「で、オマエからのお土産は?」
『え、あ、うそ、え、ありがと……』
混乱しながらもぎこちなくそう言うなまえに五条はモフモフを押し付けて、なまえの手元からお土産袋をふんだくった。モフモフを手に感動しているなまえの横で、五条はごそごそとお土産袋を漁りながら憎たらしい顔で言った。
「うわーセンスねー」
『~~っ感動を返せ!!』
「なんかいい匂いしない?」
なまえの渾身のツッコミを無視して、五条が横を見ながら言った。
言われてみれば確かに、そこら中に甘い匂いが広がっていた。これはおそらく、キャラメルの匂いだ。