第2章 魔法にかけられて
『別にそんなつもりないけど』
「硝子にはいつもベタベタしてるくせに、俺にはすげぇ生意気こいてくんじゃん」
『いやそれはアンタが毎回突っかかってくるからでしょ?アンタが優しくしてくれれば優しくするよ、人として』
「何、俺がいつオマエに優しくないっての」
『は!?逆にいつ優しかったの!?』
なまえは思わず目を見開いて突っ込んだ。とんちんかんな事を言う五条に呆れながら、なまえは菓子棚に視線を戻した。
『硝子のはどれにしようかなぁ』
「これでいんじゃない、定番っぽいし」
五条はそう言って、目の前のチョコクランチを手に取った。
『定番なら間違いないもんね。でも硝子は甘いの好きじゃなかったような…まぁ記念だしいっか。あ、ねぇ、夏油って甘いもの好きなの?』
「なんで?」
『いや夏油もチョコ食べれるのかなって』
「…ふーん。普通に食べれるよ」
『そっか。じゃ、皆これにする』
「一個多くない?」
チョコクランチの缶を買い物かごに四つ放り込んだなまえに、五条が首を傾げる。
『硝子と、夏油と、先生と、あとこれはアンタの』
なまえの言葉に、五条は驚いたように目を見開いた。
「俺の?」
『うん。チュロスとか、カチューシャとか、色々買ってくれたし……それにアンタ甘いもの好きでしょ』
「………」
身長の差によって自然となってしまう上目遣いでそう言うなまえに、五条はふい、と顔をそらした。
「…じゃ、俺のはオマエが選んでよ」
『え、このチョコクランチでいいじゃん、定番なんでしょ?』
「普通とか定番とか嫌いなんだよね」
『ワガママかよ』
面倒臭い奴だなと思いながらも、渋々五条が好きそうなものを選びながら広い店内をうろうろしていれば、ふと目にとまるものがあった。ディズニーのキャラクターの尻尾を模した、もふもふのストラップだ。そのあまりにもふもふの愛らしいシルエットに、思わず手が伸びる。触り心地は、想像通りのモッフモフだ。