第2章 魔法にかけられて
「はい、こっちみてー、笑ってー、そのブスな顔やめてくんない?」
内側カメラに向かってポーズを取り二人の写真をぱしゃぱしゃと撮り始める五条に、なまえは顕著に顔を歪める。
『…何勝手に撮ってんだよ』
「カメラ向けられたときくらい笑えよオマエ笑ってればまだマシなんだから」
『笑ってればまだマシってなんだよ』
「いいから笑えって言ってんの」
『………』
そんな急に笑えと言われても。写真なんて撮り慣れていないし、どういう表情をすればいいのかわからない。戸惑いながらも僅かに口角をあげてみれば、五条がぱしゃぱしゃと連続で携帯のシャッターボタンを押した。
一通り写真を撮って満足したのか、データフォルダに入った撮りたての写真をみながら五条はしみじみと言った。
「オマエさぁ、顔が可愛くてよかったね。親に感謝しろよ」
『か、かわ…!?な、なに急に――』
「性格が残念すぎるもんな」
『オマエにだけは言われたくねぇよ』
一瞬でも照れてしまった自分を全力で恥じた。
はあ、といつものようにため息を吐いてから、隣のバカとお揃いの耳付きカチューシャを揺らしながら歩き出す。来るまでは乗り気じゃなかったはずなのに、いざ来てみれば矢張り心が躍る。さすが夢の国だ。
『ねぇ、アレが噂のシンデレラ城!?』
「それ以外に何だっての」
『うわ、あそこにミッキーマウスがいる!マジのミッキーマウスがいる!』
「そりゃディズニーランドなんだからいるだろ」
はしゃぐなまえに、五条は尽くツッコミをいれる。子供みてぇ、なんてぼそっと呟いた五条の言葉は、勿論なまえには聞こえていない。