第17章 残響のマリオネット
『………七海、』
「他人のために命を投げ出す覚悟を時として仲間に強要しなければならない。……呪術師って、なんですか。必要ですか。“呪いの言葉“を残して死んでいく人間をーーー後どれだけ見ていけばいいんですか」
七海の口から出てきた言葉は、本当に自分の口から出てきたのかと思えてしまうくらい珍しく感情的だった。吐き捨てるようなその言葉に、隣で彼女は苦しそうに眉根を寄せながら、小さく口を開いた。
『呪術師に悔いのない死なんてない。だから、灰原も―――他の誰でもない、七海に、託したくなったんだと思う。たとえそれが、残された側の人間にとって呪いの言葉として残ると分かっていても―――託したかったんだと思う。未だ見ぬ明日を』
なまえの言葉に、七海は静かに唇を噛み締めた。
『……いざ"死"に直面した時、後悔しようがなんだろうが、自分で選んだ道を全うして終わるんだ。私たちが直面しているのは、仲間の死じゃなく、生き様だ。仲間に託された言葉を、仲間の思いを、私たちが繋いでいくんだよ。それが呪術師だ。―――必要だよ。この世界が、この世界であるために。だから私達は今ここにいる』
明日の方向を真っすぐに見つめながらそう言うなまえに、七海は呆れたように小さく掠れた声で言った。
「……あなたは強いですね。私と違って呪術師に向いている」