第17章 残響のマリオネット
二人並んで、紙パックのジュースをストローで吸う音が、静かな廊下に響く。そうして、しばらく続いた沈黙を破ったのはなまえだった。
『今日も暑いな』
「……わざわざそんなこと言いに来たんですか?」
『……いや、』
ーー彼女の言わんとすることを、七海は、なんとなくわかっていた。
同級生を失った七海に、彼女は言いづらそうに、一度口を噤んでから、ゆっくりと開いた。
『七海、お前に責任はない。そこだけは履き違えるなよ』
「……なんですか急に。私がそんな情に熱い善人に見えますか」
素っ気なくそう答えれば、彼女は困ったように笑った。
『お前は誰よりもまともで、情に熱くて、優しいよ。だから心配なんだ』
なまえの言葉に、七海は小さくため息を吐いてから続けた。
「……みる目がないですね」
『そうか?自分で言うのもなんだけど、私は見る目があると思ってるよ』
嫌味にすら馬鹿正直に答える先輩に、七海は再びため息を吐いた。
そして、ゆっくりと睫毛を伏せる。しばらく流れた沈黙を遮ったのは、七海の悲痛な声だった。
「……呪術師って、なんなんですか」