第17章 残響のマリオネット
『いつか悟には向いていないと言われたけどね』
はは、と笑う彼女の横顔は。よく見れば目の周りが赤く、そして腫れていた。後輩の前で強くあろうとする姿は、あまりにも彼女らしいと思ったことを今でもよく覚えている。
『一緒に強くなろうな、七海』
「…あなたはもう十分強いじゃないですか。なんたってその才能がある」
『才能なんて関係ねーって。あってもそれが使いこなせてないんじゃ意味ないじゃん。呪術師って、私たちにしかできない仕事だよ?努力とパワーでゴリ押そうぜ、ほら』
彼女の小さな拳が、コツン、と胸板に当たる。うっすらと血管が透けている雪のように白い肌、折れてしまいそうなくらい細い腕。ああ、いつか、この人の最期も看取る事になるのだろうか。なんて、そんな思考が一瞬過ぎってしまった自分に、心底嫌気が差した。
『灰原の想いを繋ごう。このクソみたいな呪術師業界を変えるんだ。もう、誰も失わないように。理不尽に誰かが泣かないように。だから、強くなろう。約束な、七海』
「……あなたまで私に呪いの言葉をかけるんですね」
眩しい笑顔を向ける彼女に、七海は小さく呟いた。その言葉が彼女に届いていたのかどうかは―――今でもわからない。