第17章 残響のマリオネット
『ーーーお疲れ、七海』
医務室の前にあるベンチに一人、もたれ掛かるように座っていれば、声が掛かった。今は一人でいたいのに、と思いながら七海が嫌々顔をあげれば、そこにはいつもと変わらない笑みを浮かべたなまえが立っていて。
そんな彼女を迷惑そうな顔で見つめていれば、ほい、と紙パックのジュースを急に放ってきたものだから、七海は慌ててそれをキャッチした。そして、パッケージを見て絶望する。何故、よりにもよって“イチゴミルク“なのか。こんな甘ったるいものをもらって喜ぶ人間なんて、ここには五条悟くらいしかいないだろうに。
「……いりませんよ、イチゴミルクなんて」
『カロリー摂んないと。身体がもたねーぞ』
そう言って、当然の如く隣に腰掛けたお節介な先輩に、はあ、とため息を吐きつつ、渋々イチゴミルクの紙パックにストローをさしこみ口につけた。思わず顔が歪むくらい、甘ったるい味がした。