第17章 残響のマリオネット
「……何がですか」
『わざわざ北海道まで来て、こんな話をさ』
しんみりとそう言いながら、グラスに口をつけるなまえを七海は横目で見つめる。おそらく、“夢“のことも、“死者蘇生“についてのことも、五条には話していないのだろう。そんなことを思いながら、七海は続けた。
「謝るくらいなら最初からついてこないでください」
『はは、違いない』
目を細めて優しく笑う彼女の横顔は、もうすっかり大人のそれなのに、どこか幼さと儚さを残していてーー昔の、高専時代の彼女と重なる。
『こうして二人で話すのは少し久しぶりだな』
「……そうですね。アナタの隣には常に嫉妬深い誰かさんがいますから」
はは、と楽しそうに笑う彼女に、七海は何がそんなに楽しいんだかと思いながらも自然と緩んでしまう表情を誤魔化すように、グラスに口をつけた。
『戻ってきてくれて感謝してる。悠仁のことも。引き受けてくれてありがとう』
「……引き受けるなんて一言も言っていませんがね」
嫌味を言ったつもりで隣を向けば、その大きな瞳と目が合った。今にも吸い込まれてしまいそうな、とうめいな瞳。時が経っても変わらないーー揺るぎない、眩しい光。
七海の脳裏にふと、十年前の或る日の事が過ぎる。