第17章 残響のマリオネット
「わざわざ遠路はるばる北までついてきて、真の目的はそういうことでしたか」
七海の言葉に、なまえはふ、と仕方なさそうに笑いながら、口を開いた。
『ああ、それも半分。私個人は、今回小耳に挟んだ“死者蘇生“についての話に少し興味があったんだ。悟は本当に知らなかったみたいだけれどね』
「………」
『死者蘇生なんて馬鹿げた話が、杞憂で終わってよかったよ。私は悟と違って強くないから、そんな眉唾な話でもーー時折信じてしまいたくなってしまうような、センチメンタルな瞬間があるのさ』
「アナタは五条さんと違って割とまともですからね。そんな思いに耽る時もあるでしょう」
『―――この前、変な夢を見たんだ』
「夢、ですか」
『ああ。……傑が…いや、正しくは、傑の形をした“何か“が出てきたんだ』
なまえはそう言ってから、その長い睫毛を伏せた。
『だからかな、こんな馬鹿げた話を、どこかで期待してしまっていたのも。だって、死者は蘇らない。蘇らないから、人は過去を諦められる。蘇らないから、人はせめて正しい死を求める。……それに、そんなことが可能だとするならーー私は今、ここにいないもの』
なまえの言葉が、七海の胸に静かに、重く、響く。
『ごめんな』
急に彼女の口から出てきた謝罪の言葉に、七海は一瞬反応が遅れてしまった。