第17章 残響のマリオネット
「人の痛みが分かる大人に預けたいからね。オマエみたいに」
「……そんな甘ったるいことを言うために、わざわざ此処まで?」
「僕が甘党なの、知ってるだろ」
笑いながら、五条はグラスの片方を七海の方へと寄せた。それに連なるように、なまえもほほ笑みながら自身のグラスを七海の方へと掲げている。
甘く、酸っぱい、黄金のカクテル。
青春のくすぐったさを詰め込んだようなそれを、七海は少しの間、黙って見つめ、
「私は苦手ですけどね」
特に示し合わすことなく、三人は同時にグラスの中身を飲み干した。
「甘っ」
「旨いだろ」
『甘すぎるよ。マスター、ハイボールを』
「私も同じものを」
あまりの甘さに顔を歪める七海が、なまえに続く。
「じゃ、僕もメロンソーダで」
『バーにメロンソーダなんてないだろ』
「ございます」
マスターの言葉に、あるのかよ、とでも言いたげな七海となまえは同時に顔を合わせた。そんな二人を余所に、五条は「ちょっとトイレ」と言いながら席を立つ。
間に一人分、スペースが空いたところで、七海となまえの前にハイボールがそっと置かれた。少しの沈黙が続いてから、先に口を開いたのは七海だった。