第17章 残響のマリオネット
「……呪骸の生産工場を兼ねる、自己増殖する呪骸、ですか」
肉と髪を編むようにして、幾つもの呪骸が今もなお、ゆっくりとしたペースで生み出されている。男の体がいかにして侵食されていったのか、もはや語るべくもない。
「“親に渡す呪骸作成に死体の皮を使ったのなら、残りの肉はどうしたのか“と思っていたけど…なるほど、食われる肉を補填していたわけだ」
「死体を使ったとは言え、こんな男がどうやって、あの精巧な呪骸を仕上げたのか、というのは疑問でしたが…」
『現代の呪術師がおいそれと作れるものじゃない。おおかた、古い呪術師の家系の成れの果てが、蔵の底から掘り出した呪具……もとい、暴走呪物というところか』
「ややこしい送金体制まで用意していた以上、最初は純粋な金儲けだったのでしょう。悪意があったことは明白です。そもそも情状酌量の余地はないでしょうが……」
心底疲れたように、七海がため息を吐く。
「死体どころか生者も貪る代物だ。悠長に構えちゃ、いられないでしょ」
いかにも気怠そうに、五条が肩を落とす。
『……人肉を食み、人形を生み出す人形。その肉を賄うため死体を集め、それでも間に合わず、今や人形に取り憑かれた人形師。そのどちらも、おおよそこの世に存在していいものではないな』
うんざりとした表情で、なまえが言う。
人形師を見下ろす三人の表情は、同じ部類のものだった。
籠められた感情は、諦観。現状を受容した人間の顔。
それはーーー救いを求める人形師にとって、喜ばしいものであるはずもなく。