第17章 残響のマリオネット
木材と留め具の軋む音が派手に響き、埃が舞う。ヤクザ映画もかくや、というガラの悪さで登場した呪術師たちに、部屋の主ーー“人形師“は思わず腰を浮かせた。
「……な、なんだ、キサマら……?」
「客に見えるなら眼科行けよ、三下」
「呪術師ですよ、真っ当な」
『アンタみたいなのとは違ってね』
3人の声には、侮蔑の感情が籠もっていた。
押し入った室内の様子は粗末も粗末。日本だか中国だか韓国だか分からない、無節操に雰囲気だけを追求した内装。極め付けは、部屋の主たる人形師の装いだ。
一体どこのレンタル屋から拝借してきたのか、というような安っぽい生地。その上から、辛うじて呪い程度の効果を発揮するであろう、粗雑な札を包帯のように巻いて、己の体を覆っている。
いくら相手が一般人とはいえ、それで人を騙せると思い込んでいるのならあまりに烏滸がましい。いや、実際騙せてしまっているのだから救えない。
その在り用は、一から十まで呪術師への侮辱と言えた。
「呪術師……?そ、そそ、そうか、き、キサマらも呪術師か……」
「“も“ってなんだよ。まさか自分を呪術師に数えてんの?」
『烏滸がましいにも程があるね』
「お願いですから下手な抵抗をしないでくださいね。力加減をするのも疲れるもので」
抱く思いは、五条となまえに続いて七海も同じだろう。サングラス越しの眉間に刻まれるシワは深い。
そこには人形師の存在と、彼の非道に対する生理的嫌悪感が滲んでいる。今は武器こそ手にしていないが、七海は即座に戦闘行動に移れる構えを取っていた。
たとえ人形師が似非呪詛師と言えど、一般人の感性から見てもわかる程度には、七海という一級呪術師の発する存在感は強い。
逆にこの状況を楽観視できるなら、それは相当なマヌケか。あるいは、すでに正気を失っているか、だ。