第17章 残響のマリオネット
七海の世知辛い言葉に、五条ははあ、とため息をついてぱりぱりとソフトクリームのコーンを齧る。最後の一口を五条が食べてしまったものだから、『あ』となまえの不満げな声が静かに響いた。そんななまえの親指にしたたったクリームを、ごく自然にぺろりと舐めた五条は、サングラス越しに七海を見つめた。
「七海さぁ、サラリーマンって呪術師の仕事よりクソだった?」
「自分の向き不向きを除けば、五十歩百歩ですね」
「呪われてるなぁ、この社会」
「救いがありませんね、その表現」
『で、七海』
五条に舐められた親指をジャケットの裾でゴシゴシと拭きながら、なまえが口を開いた。
『その人形とやらを売ってる……"人形師"とでも呼ぼうか。そいつの居場所は掴んでいるんだろう?私たちはどっちに行けばいいんだ?』
「もう通り過ぎました。誰かさん達が勝手に歩いて行くので」
「え、僕たちのせい?」
『なんで私も含まれるわけ。私は悟について行っただけなんだけど』
「え、じゃあ僕のせい?」
「……アナタが居ない分サラリーマンのほうがマシだった、とは思わせないでくださいね」
七海はほんの少しだけ、自分の進退を見つめ直していた。