第2章 魔法にかけられて
『……嘘でしょ』
「アハハ、ドンマーイ!写メ送ってねなまえ!」
爆笑しながらそう言う硝子に、なまえはじとりとした視線を向ける。
『…硝子、私の悲劇を楽しんでるでしょ』
「当たり前じゃーんこんな面白いことないでしょ!」
『…はぁ。おい、夏油も何笑ってんだよ』
「…クク、ごめんごめん。まぁ、悟もこう言ってる事だし、楽しんで来ればいいじゃないか」
硝子と夏油はひとしきりげらげらと笑ってから、放課後のHRを終えた後二人でさっさと修練場の掃除に向かってしまった。今日中に片付けて、明日の休みはゆっくりするんだとか。ああ、なんて羨ましい。なまえは心底恨めしく思いながら、机に項垂れて本日何度目かわからないため息を吐いた。
『はあ……』
「ため息ばっかついてんなよ鬱陶しい」
隣で漫画を読んでいる五条が言った。自分の部屋で読めばいいのに、なんでこいつまだ教室にいるんだろうなんて思いながらなまえは答える。
『…うるせぇ。何が悲しくてせっかくの休日にアンタと夢の国なんて行かなくちゃならないんだよ。…あ、そうだ!行ったフリしてばっくれればいいじゃん。ねぇ、そうしよ――』
「ヤダね」
今際の際で思いついた提案は、ぴしゃりと即却下された。
『アンタも私とディズニーランドなんて行くの嫌でしょ!?あのディズニーランドだよ!?』
「だから俺は嫌じゃないって言っただろ」
漫画のページをぺらりと捲りながら平然とそう答える五条。けれどなまえは諦めることなく訴えた。
『意味わかんない!なんで!?』
なまえの問いかけに、ようやく五条は漫画から顔を上げる。サングラス越しに見える青い瞳は一瞬揺れて、長くて白い睫毛に伏せられた。
「だってオマエ、映画見ることくらいしかしてこなかったんでしょ」
五条の言葉に、なまえは思わず目を見開いた。