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【呪術廻戦】廻る日の青

第2章 魔法にかけられて




―――"『それくらいしか"させてもらえることなかったから"』"

以前五条に映画を見るのかと聞かれたとき、なんなしに言った言葉だ。彼はこれを覚えていたのだろうか。その上、青春を謳歌したことのない自分を気遣ってくれているというのだろうか。――否、そんな事は有り得ない。いつも憎たらしい顔で罵詈雑言を吐き散らしどんな些細な事でも容赦なく小馬鹿にしてくるこの男が、人に気を使うだなんて、そんなことあり得るわけがない。そう心の中で自問自答をしているなまえに向かって、五条は続けた。


「…ま、俺も似たようなモンだけど。たまにはいいんじゃね、一生行くことなさそうだし。行ってみたら案外楽しいかもよ」


頬杖をつきながらそう言った五条は、悪戯に笑った。


『……あ、うん…』


珍しくまともな事を言っている五条に、なまえは思わず頷いてしまった。もしかして、実のところ彼は優しいんじゃ…なんて思い始めていれば、次の発言でその思考は見事砕け散った。


「オマエ見るからに友達とかいなさそうじゃん。どうせ行ったこともなけりゃ今後行く事もねぇだろ。だから俺が付き合ってやろうと思って。優しい五条悟様に感謝しろよ。神と崇めろよ」

『………』


うぜえ、この言葉がこんなにもぴったり当てはまる奴は世界中を探してもこの五条悟だけだと思う。なまえは目の前の憎たらしい男に顕著に顔を歪めながらも、本当の事なので否定はせずに続けた。


『アンタには言われたくないね。まぁ、友達もいなかったし、行ったこともないけどさ』

「ま、俺も行ったことないけどね」

『アンタもないのかよ』


だらだらとくだらないやり取りを交わしていれば、また桃鉄に付き合わされそうになったところでなまえは逃げるようにして女子寮の部屋に戻ってきた。

明日の集合時間などについては何も話していないけれど、起きてから適当に準備して向かえばいいだろう。ただでさえ五条にしつこく付き合わされている桃鉄のせいで睡眠不足なのだ、休みの日くらいゆっくり寝たい。というか、明日は何を着て行こう。硝子曰く歩きやすい服装がいいらしいが、制服じゃまずいよな、まぁ起きてから適当に考えればいいか、なんてぼーっとそんな事を考えていれば、いつの間にか、深い眠りに落ちていた。


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