第17章 残響のマリオネット
「毎度思うのですけど、それだけ頭が回るなら、説明しなくても自分で調べて欲しいのですが」
「不可能でなくても面倒なことは、後輩を使うのが一番手っ取り早いんだよ」
『本当最低だよな、オマエ』
「オイオイ七海ィ。オマエのせいでなまえからの好感度下がったんだけどどうする」
「理不尽」
はあ、と何度目かわからない七海のため息は長かった。
吐ききった息を吸い込んで、七海はようやく事件の核心に触れることにした。
「ーーー死者の蘇生です」
「……なんて?」
五条は珍しく、耳を疑った。
それほど馬鹿げたことを、七海は言った。
「そのサイトで販売されているのは、死者の魂を呼び戻す“新しい器“……“反魂人形“とか名付けられているそうで」
『……センスのない冗談だな』
「まぁ、十中八九インチキでしょうね、ただ……」
「いや分かったよ」
五条はひらひらと手を振った。
「十中八九、九割九分がインチキ商売だとしても…万が一にも事実かもしれないなら、無視できない、そういうことだろ」
ーーーこの世には、考えるまでもない真実がそれなりにある。
夜が明ければ朝がくるだとか、氷が冷たいだとか、リンゴが木から落ちるとか。笑ってしまうくらい単純なルールが確かにあるから、世界は成り立っている。逆に言えば、これらが覆れば世界は成り立たない。
1+1が2でなければ全ての計算が崩れ、夜が明けて朝が来なければ、それだけでこの星は滅んでしまう。
笑ってしまうくらい単純なことは、そうでなければ笑えない。そんな真実の一つに、時間の不可逆性がある。覆水盆に帰らす。後悔先に立たず。時間は、過去へは戻らない。
その最もわかりやすく象徴的な事象は“死“でなければならない。