第17章 残響のマリオネット
「結局のところ、そのサイトは、ある呪詛師へ連絡を行うための窓口のようです」
「窓口?」
「簡単な入力フォームがあり、そこに依頼内容を書き込んで送信すると、現金書留の宛先が表示され、商品が購入できるわけです」
「郵送払いのアナログかよ」
『そのサイトの主も、写真を写メっつって生徒達にバカにされてたオマエのようなアナログ太郎には言われたくないだろうね』
「いや、なまえも似たようなもんだろ。この前着信音のことを着メロっつってバカにされてたじゃん」
『着メロは着メロだろ』
「せめて"着うた"だろ、なぁ七海」
「ぶっちゃけ私はどうでもいい」
心底どうでもいい話を繰り広げる二人の先輩にため息を吐きながら、七海は続けた。
「アナタ達のペースに流されていては一生話が進まないので続けます。住所は零細不動産屋の所有する、北海道の某物件に指定されていました。二畳一間のシェアハウスだそうで」
「どこをシェアするんだよ」
「郵便受けが二十個ありました。簡易的な私書箱として、後ろ暗い連中が利用しているようですね」
「手口がヤクザのフロントだな。呪詛師の発想じゃない」
『ま、良くも悪くも家系の呪術師なら、まずこういうルートの整備を行う発想がないだろうね』
「んで、結局なんの通販なんだ?はぐれ呪詛師なら蠅頭程度の呪霊を祓う呪具でぼったくり、他人を呪って小遣い稼ぎしてそうなもんだけど……その程度の相手で七海が呼ばれやしないだろ」
「察しのよろしいことで」
「誰と会話してるのか考えて言えよ。オマエが呼ばれてるのに僕やなまえが詳細を知らされてないなんて、お偉方のジジィが隠したい案件だったってことだろ」
「だとすれば、私が“詳細を話すのを禁じられている“という可能性も考えられるんじゃないですか?」
「関係ないだろ。僕がその気になったら口を割らせるなんてワケないからね。奴らにできるのはせいぜい“事件そのものを知られないようにする“ことくらいだ。ってことは僕となまえがここに来た時点で詰んでるだろ」