第17章 残響のマリオネット
「塩辛のせたので。美味しいですよ、あげませんけど」
「いやいらねーよ。ビジュアルがこないだ祓った呪霊に似てるし」
「………」
静かにイラッとした七海の横で、なまえがひょっこりと七海のジャガバターをのぞいている。
『へえ、美味しそう』
「食べますか?」
『いいの!?食べる食べる!』
「オイオイオイ、オイ。ジャガイモに塩辛のせただけでなまえにチヤホヤされるなんておかしいだろ。僕にはあげないって言ってたくせに」
「どうぞ」
ぶつぶつと文句を垂れている五条を無視して、七海はなまえの前に塩辛のせジャガバターを差し出した。なまえはきらきらと瞳を輝かせながら、箸でジャガバターを丁寧につつくと、あーんと口を開いた。
『いただきまーす』
その小さな口の中に、塩辛のせジャガバターが入る、寸前。
ジャガバターはその可愛らしい口の中に入ることはなく―――横から割って入って来た五条の口の中にぱくり、と虚しく入っていった。
『ちょっと!何すんの!?』
「んー、だって呪霊みたいな食いもんが僕の可愛いなまえの口の中に入ると思うとなんか嫌だったんだもん」
『うっざ』
「………うざ……」
吐きそうなくらい甘ったるいことを平気で抜かす先輩に、七海は心底うんざりした。ほんの些細なことでやきもちを妬く五条も、そんな五条に悪態をつくなまえも、本当に昔から変わっていない。全くこの二人といると、調子が狂うーーーまるで―――昔に、戻ったようで。
七海はそんなことを思いながら、ふう、と小さく息を吐いたのだった。