第17章 残響のマリオネット
「食べるんですか」
「食うよ。だって日本で二番目にジャガバター好きな男だよ僕」
「アナタ達にとってはバカンスでも、私は一応、仕事しに来たんですけどね」
「じゃあオマエは食わなきゃいいよ、僕たち二人で北海道を味わうから。ねーなまえ」
「食べますけど」
いらっとした七海は、なまえに甘ったれた表情を向ける五条の間に割って入ったのだった。
ーーー大通公園のベンチに、男二人、女一人。
カジュアルな黒づくめとかっちりしたスーツ、二人揃ってサングラス。そんな二人の間に座るのは、雪国に舞い降りた妖精のような可憐な女性。
パフォーマーやコスプレイヤーが往来を歩いていても「そういうこともあるか」となる街が大都会札幌であるが、それをさし引いても人目を引く不思議な三人組である。
「うわ美味しい!ホックホクだよホックホク」
『ほら言ったじゃん。ウチで焼いてもこうはならないよ』
「いやマジでね。ナメてたわジャガバター。屋台で焼くだけのことはあるわ」
「ビールが欲しくなって来ますね。やはり仕事の後にすればよかった」
『わかるわぁ。ビールにジャガバター、最高だよな』
「ですよね」
意気投合する二人に、五条は不満そうに口を尖らせた。
「僕としちゃ単品で旨いものを酒と組み合わせて考えるのはあんまりよくわからないんだよな」
『アンタ下戸だもんね。この愉悦がわからないなんて損してるよ』
「いつからオマエはそんな悪い子になっちゃったの?硝子のせいだな。言っとくけどまた次僕がいないところで酒呑んだら一生監禁コースだよ」
「頼むからそういうの余所でやってくださいよ」
うんざりした顔でそう言う七海に、五条が気づいたように言った。
「え?あれ?七海のジャガバターだけなんか僕達のと違わない?」