第16章 因中有果
「ここは無下限の内側。"知覚""伝達"生きるという行為に無限回の作業を強制する」
穏やかに言いながら五条は、ぴたりと動きのとまった火山頭の呪霊の頭をおもむろに掴んだ。
「皮肉だよね。全てを与えられると何もできず穏やかに死ぬなんて。でも君には聞きたいことがあるからこれ位で勘弁してあげる」
その穏やかな声とは反対に、ズズ、と不気味な音を立てながら五条はその頭を思い切り引き抜いた。ボパ、と形容し難い引き裂かれるような残酷な音が辺りに響いて、あっという間にその呪霊の身体は消し飛び首だけが地面にころころと転がった。
あまりに一瞬の出来事で生き物としての格の違いを見せつけられ、虎杖は息すら忘れていた。ごろり、と地面に転がった呪霊の頭を、五条はその長い足で踏みつけた。
「さて。誰に言われてここに来た」
五条の問いに、火山頭は踏みつけられたまま何も答えない。
「命令されて答えるタイプじゃない、か。僕を殺すと何かいいことがあるのかな。どちらにせよ相手は誰だ?はやく言えよ、祓うぞ。言っても祓うけど」
言いながらぐりぐりと呪霊の頭を足で転がす五条に、虎杖はぽかんと呆気に取られながらも隣にいるなまえに向かって口を開いた。
「っていうか呪いって会話できんだね…普通すぎてスルーしてたわ」
『普通じゃありえないよ。あんなにちゃんと意思疎通を図れる呪いを見たのは私も初めてだ。まぁ、君の中にいる宿儺を除いてね』
言ってから、火山頭に続ける。
『さっさと言ったほうが楽に逝けるのに。早く言わないとサッカーボールにして遊んじゃうぞ』
瞬間。
五条の足元にドス、と何かが降ってきた。
あっという間に辺り一面にふわりと花が咲く。ほっこりと頬を緩める虎杖と五条の頬に、なまえは思い切りビンタをかました。
『呪術だぞ、戦意を削がれるな』
なまえの言葉にハッと我に帰った二人が気づいた時には、虎杖の足元に枝のようなものが巻きついていた。
「げっ!!」
宙に浮いた虎杖になまえと五条が目を向けた瞬間、先程まで地面に転がっていた火山頭の呪霊の頭が消えた。もう一体、呪霊が現れたのだ。