第16章 因中有果
『今説明中なんだ。少し黙っててくれるかな?』
「フン、儂が話しているのは貴様ではない。五条悟だ」
『私が話しているのも君じゃない。可愛い生徒に、だ。邪魔しないでよ』
「……小娘が。貴様から灰にしてやろうか」
『へえ。私から灰に?光栄だな、やれるものならやってみたら?』
普段と変わらない笑顔を向けながら、なまえは呪霊に向き合う。構える様子もなく、なまえはコツ、コツ、と靴音を立てながらいとも簡単にその呪霊に近づいていく。
「ちょっ…なまえさん…!!五条先生、止めなくていいの!?」
「んー、止める必要がない、ってのが正しいかな」
「は…?」
ぽかん、と口を開いている虎杖を横目に、火山頭の呪霊が先程五条に向かって投げかけた術式を振り翳す。瞬間、巨大な火の粉が次々となまえを襲う―――が。
『この程度の領域で私に傷をつけられると思った?心外だな、標的は五条悟だけか?優秀な術師は今や彼だけじゃないよ』
なまえには傷はおろか、当たってすらいない。どうやってその斬撃を受けたのか、虎杖は必死に目を凝らして見つめる。
「ど、どういうこと…?絶対当たるんじゃねぇの…?」
「うん。絶対当たるよ。だから呪術で受けたんだ。ま、簡単に言うと」
言いかけた五条の言葉を、ドン、と轟音が遮った。あまりに一瞬の出来事で、虎杖は呆気に取られたまま。火山頭の呪霊は、先程までいた場所から消えている。
『はは、久しぶりだな。一撃で死なないんだ』
楽しそうに嗤うなまえが、服についた火の粉をパラパラと払った。なまえの履いているヒールが、火山頭の呪霊の頭にめり込んでいる。先程まで其処に立っていたはずの呪霊は、今やなまえの足元にいた。
「なまえには遠く及ばないってことだ」
五条が満足げに言うと、なまえに向かって続けた。
「なまえ。遊ぶのはその辺にして。今日ここに来たのは、その呪霊にそんなイイ思いをさせるためじゃないからね」
「ええ…あれがイイ思いなの…?」
なまえに踏みつけられている呪霊を、顔を歪めながら見つめる虎杖。