第16章 因中有果
『さて、どんな夢でしょう』
「もったいぶってると犯すぞ」
『もったいぶらなくても犯そうとしてるだろ。今日は辞めてよね、朝から忙しいんだから』
「そんな朝にほんのスパイスをいれてもう少しだけ忙しくしたら今日の仕事も捗るよ。僕はそう思う」
『悟はそうでも私は違うの。歳を考えろよ、歳を。年中盛るな』
「100年経ってもこのまま保てる自信あるけど」
『馬鹿言え。早く退いて、準備しなきゃ』
どさくさに紛れて舌で首筋を舐めようとしている五条の小さい顔をぐい、と引き剥がして、なまえはさっさと半身を起こした。
「はー、今日も奥さんが冷たい。僕を誘っておいてお預けなんて、夜はものすごいご褒美が待ってるんだろうね。うん、そうに違いない」
『勝手に発情しただけだろ。人のせいにした挙句夜の約束までこじつけようとするな』
「そうは言いつつ、なんだかんだのってくれるのがなまえだよね」
『うるさいな。くだらないこと言ってないで早く準備しろよ。悠仁のところに行く約束だろ』
「はいはい、大人しく準備しまーす。楽しみは夜に取っておくから。ていうか、結局どんな夢だったんだよ」
五条は口を尖らせながら愛しい背中にそう問うが、なまえは呆気なく、『もう忘れた』なんて言いながら肩をすくめて、軽く受け流されたのだった。