第16章 因中有果
―――夜。
なまえは仕事を終えた後、高専の広い敷地内の一角を訪れていた。
虎杖の生存お披露目は順を追って、ということで、現在彼は五条の用意した部屋で隠遁生活を送っている。
地下へと続く階段を降りれば、少し薄暗い部屋に辿り着く。其処には大きなテレビと真剣に向き合う虎杖悠仁の姿が在った。
虎杖はスクリーンに映る映像を、学長特性の呪骸"ツカモト"を抱きながら真剣に見つめている。
『―――悠仁』
「うわっ!?」
なまえの突然の声に、虎杖は驚き振り返る。なまえはそんな悠仁に笑顔を向けながら、ツカモトをちらりと見た。ツカモトは鼻ちょうちんを出しながら眠ったままだ。
"ツカモト"―――この熊のような愛らしい(?)容姿の呪骸は、ただのぬいぐるみではない。
一定の呪力を流し続けないと目を覚まし、容赦なく襲ってくる。五条が虎杖に課した最初の課題は、このツカモトとの"映画鑑賞"だ。
ドキドキハラハラワックワク、泣けて笑えて胸糞悪くなれる映画がひととおり揃えられ、まずその呪骸を起こさずに映画を一本無傷で観通すこと。どんな感情下でも一定の呪力出力を保つための訓練である。簡単なようで、初心者には相当難しい課題のはず、なのだけれど。
「なまえさん!?びっっくりしたー……五条先生ならさっき用事があるって言って出て行っちゃったよ?」
突然話しかけたにも関わらず、呪力を一定に保てているようだ。随分と飲み込みが早い。これなら早めに出力をあげて次の段階へと進めそうだ。なまえは感心しながら、驚いている様子の虎杖の隣に腰掛けた。
『知ってる。私は悠仁の様子を見に来たんだ。悟と交代でね』
「マジ!?なまえさんも俺に修業つけてくれる感じ!?」
『残念だけど、私が悠仁に修業をつけるのはもう少し先になるね。今は恵たちに体術の訓練をつけないといけないから、ここには夜しか来れないんだ』