第15章 ハジメテをキミと。※番外編
―――その夜。
任務を終えてから、くたびれた雑巾のように自室の部屋のソファに寝転がる。
朝廊下で話したあと、幸い五条とは別の任務だったのであれから顔は合わせてない。というか、あんなことをぶち撒けて、どんな顔で会えばいいのかわからない。恥ずかしすぎる。そんなことを考えながら、クッションに顔を埋めていれば。
「お疲れサマンサー!!」
バン!と扉が勢いよく開いた音と同時に、空から降ってきたような軽快な声が聞こえてきた。鍵は閉めたはずなのに。慌てて飛び起きてから顔を上げれば、当たり前のように部屋に入ってこようとする五条がいた。
『〜〜な、なんで!?!』
「なんでも何も。奥さんの部屋に帰るのに理由なんていらなくない?」
『いや鍵閉めたのに!?』
「鍵持ってるもん」
ちゃら、と音を立てて人差し指にかかる鍵を見せつける。いや、いつの間に合鍵作ってんだコイツ。ツッコミ所はたくさんあるけれど、聞いたところで真面目に答えてくれる気もしないのでとりあえず無視して続けた。
『あのさぁ。私にだって、一人になりたいときくらいあるんだよ。今日は一人になりたいの、出てけ』
「無理。僕は一緒にいたいもん♡」
『自分勝手が過ぎる』
「今に始まった事じゃなくない?なまえ、おかえりのちゅーは?」
『っはぁ!?』
「早く早くうー」
なまえの言葉なんて何一つ聞いちゃいない。今に始まったことでもないけれど、相変わらず信じられないくらい自分勝手で自由奔放である。
靴を脱ぎ捨ててバタバタと部屋に入ってきた五条は当たり前のようになまえが座っているソファに無理やり入り込んできた。自分の図体を考えてほしい。昔五条が買ってきたぬいぐるみやらクッションやらが置いてあるため、五条が座るとめちゃくちゃ狭い。
『狭いんだけど…』
「新居では大きいソファ買うよ。でもこれくらい狭い方が近くにいれて僕は嬉しいけど」
『じゃあ新居でソファ買った後に座ってくれよ。いま私は一人になりたい気分なんだよ』
「まだ拗ねてんの?」
『……拗ねてねえし。もうあのことは忘れて』
そう言った、瞬間だった。