第15章 ハジメテをキミと。※番外編
「だからなまえのことをもっと教えてよ。言葉じゃなきゃ伝わんないこともあるんだよ、僕がそうだったみたいに」
そう言って、彼の薄桃色の唇がそのまま降りてくる。静かなキスが落とされて、思わず肩を揺らす。そのまま後退ろうとすれば、そんなことは許さないと言わんばかりにあっという間に両腕が背中に回されて、そのままぎゅ、と強く抱き締められた。
「僕が何かしたならちゃんと言って。なまえが少しでも嫌だと思う事はしないから」
いつもの余裕で飄々とした声からは想像もつかないような、どことなく不安そうな声。そんな五条に、心臓がちくりと痛む。
違う、そうじゃない。貴方は何も悪くない。悪いのは自分なのに。自分の浅はかな行動で少しでも彼を不安にしてしまったのかと思うと、どうしようもなく情けなくなった。
『……ごめん。悟は嫌なことなんてしてないよ』
『じゃあなんで怒ってんの』
『……、怒ってるわけじゃなくて……』
「怒ってんじゃん」
『だから怒ってるとかじゃなくて、』
「じゃあなんだよ」
『………』
いつまでも言おうとしないなまえに苛立った五条は、急かすようにそのままなまえをすぐ横の壁にそのままどん、と優しく、けれど少し強引に叩きつけると、顔を近づけて続けた。
「早く言えよ」
至近距離で五条が言う。なまえはしばらく黙ったあと、観念したように小さく口を開いた。
『……、や、だったんだよ』
「だから何が」
『……っ悟だけ知ってて私が知らないのが嫌だったの!』