第15章 ハジメテをキミと。※番外編
「何だよ。僕は可愛い妻とひと時たりとも離れたくないんだ、許せ硝子」
「空気読めよバーカ」
呆れるようにそう言ってから、硝子は教室を出ていくなまえの背中を見つめた。そんな硝子に五条が続ける。
「空気って読むもんじゃなくない?当たり前にそこにあるものであってさ」
「黙ってろクズ。そしてよーく胸に刻め、私の可愛いなまえを泣かせたりしたらマジで許さねえからな」
「は?泣かす訳ねーだろ。つうかオマエのじゃねえし、俺のだし」
「偉そうな事言うなら自分の奥さんの気持ちくらい察してやれよ。オマエこのままだとホントになまえの中でチャラ男認定されんぞ」
「硝子まで何?こんなに一途で純粋なナイスガイのどこをどう見たら遊び人に見えるわけ?」
「指摘すんのもメンドくさいくらい全部」
「だからドコが?待ち受けだってもう随分前から井上和香じゃなくてなまえに変えたし。オナニーだってなまえに雰囲気似たAV女優でしか抜かないし。勿論AV見てる時だって常になまえのこと考えてるし。顔と声はしっかりなまえに脳内変換するし。こんなになまえのことしか考えられない一途な僕のどこがチャラいの?」
「一途っつーかマジでキモいからなまえにはぜってー言うなよ」
道端の吐瀉物でも見るような顔で五条を見る硝子は、はあ、と小さくため息を吐いた。そんな硝子にわけがわからない、と言った様子で五条は肩をすくめると、なまえの後を追うように教室を出て行ってしまった。
「……ほんっと二人とも変な方向に純粋なんだよなぁ」
ぽつりと呟いた独り言は、誰に届くこともなく。冬の教室に小さく消えた。