第15章 ハジメテをキミと。※番外編
―――こんな風に甘い言葉を言って、こんな風に優しく触れてきたのかな。
今まで感じたことのない、モヤモヤとした黒い感情が自分の胸を支配していく。こんなこと思いたくないのに、考えれば考えるほど、彼の知らない過去に憂鬱な感情になる。そして漸く気付く。ああ、これが嫉妬か。
愛ほど歪んだ呪いはない、と。彼が言っていた言葉を改めて理解する。そして実感した。自分は嫉妬なんてしてしまうくらい彼のことが好きで、同時に、過去の女性に嫉妬をしてしまうくらい醜い感情に支配されているのだと。
そんな自分に嫌気がさして、思わずため息を吐く。今五条と一緒にいても嫌味を言ってしまいそうなので、少し頭を冷やそう。そう思ってなまえはおでこに触れられたままの五条の指を払った。
『……ちょっとトイレ』
「じゃ僕も一緒に」
「おいそれはやめとけ」
当たり前のようについていこうとする五条の腕をぐい、と硝子が引っ張る。