第15章 ハジメテをキミと。※番外編
『い、いや……ないけど』
「だよね!」
素直にそう答えれば、五条の顔は打って変わってぺカーンときらっきらの笑顔が光る。きらきらと宝石みたいな瞳を輝かせる彼を見つめながら、ふと思う。そっちはどうなんだ、と。
認めたくはないけれど、五条は性格以外、完璧だ。人形のように整った端正な顔立ちに加えて長身。大きな瞳を囲む睫毛なんて、そんじょそこらの女より長いしフサフサだ。街に出ればいやでも目を引く、俗に言うイケメンである。いくら性格に難ありでも、これだけのスペックを持ち合わせていれば嫌でも女が寄ってくるだろう。
自分は何も知らないのに、五条はきっとなんでも知ってるんだろうな、とか、今まで抱いてきた女の子たちはどんな子だったんだろう、なんて、そんなことを考えて少しモヤモヤした。
「なまえ、おいでー、これからは堂々とイチャイチャしようね♡」
そんななまえの気も知らずに、ご機嫌な五条はへらへらとそう言いながら肩に手を回してきた。そんな彼の手を、思わず払う。
『……やだ!』
「えなんで僕達今日から夫婦だよ?夫婦だよ、ふ、う、ふ」
しつこいくらいにそう言う五条に、なまえはむすっと頬を膨らませながらぷいとそっぽを向いた。
『だからってベタベタ触んないで。そういうチャラいところが嫌なの』
「はあ?僕がチャラい?何言ってんのコイツ。オマエの目は節穴か」
『いや、どこをどう見たってチャラいだろ』
「なまえ、チャラいの定義って知ってる?軽薄で浮ついてる遊び人のことを言うんだよ」
『まんまじゃねえか』
「はー、寝言は寝て言ってほしいね。こんな完璧純情ナイスガイ、世界中のどこを探したって僕以外にいないよ」
ぺらぺらとドヤ顔でそう言う五条に、なんだかますます腹が立ってくる。睨むように見上げていれば、五条の長いごつごつとした人差し指がおでこに降りてきた。
「怒った顔も可愛いけど、僕は笑ってるなまえのが好きだな。ま、どんななまえも好きだけどねー!」
そういってなまえの眉間の皺を正すように、眉根をその指で撫であげながら愛おしそうに瞳を細める五条に、心臓がどくりと音を立てた。