第14章 ある夢想
「ーーーなまえ」
硝子が名前を呼ぶ声に、ふと我に帰る。
「始めるよ」
『了解』
「ちょっと君達。もう始めるけど。そこで見てるつもりか?」
硝子が五条と伊地知に向かってそう言えば、なまえは目の前の光景に思わず目を見開いた。
虎杖の体が、動いたのだ。
そして、すぐにそれが幻覚ではないことを思い知る。痛々しく抉られていた心臓の跡がみるみるうちに塞がり、そして、その半身が起こされた。
「ーーーおわっ!!フルチンじゃん!!」
半身を起こした虎杖が、元気な声で言った。
なまえと硝子と伊地知は、あんぐりと口を開けている。
「ごごご五ご五条さん!!いいいいいい生き」
「クックック。伊地知うるさい」
「……ちょっと残念」
慌てふためく伊地知。嬉しそうに笑う五条。そして残念そうに眉を下げる硝子に、虎杖は困ったように眉を下げた。
「あの~恥ずかしいんスけど…誰?」
『悠仁……』
「おわっ、なまえさんもいたんだ!?はっず!!」
「ーーー悠仁!」
恥ずかしそうに慌てて布で体を隠そうとする虎杖に、嬉しそうな五条が叫んだ。
「おかえり!!」
「オッス!ただいま!!」
パン、と小気味良い音を立てて、二人の手が重なったのだった。