第13章 雨後
「……大切なクラスメイトだったのね」
『そうだね。彼は私達の大切なクラスメイトで、友人で。悟にとってたった一人の親友だった』
「五条先生に親友!?あいつ友達なんかいたの!?」
『あはは、いたんだよ、それが。びっくりだろう。二人して憎たらしいくらいに強くてね。二人で最強だったんだ。私はそんな彼らに追いつこうと必死だった。ボロクソにやられてさ、当時はクソみたいな青春だって思ってたけど、なんだかんだ、毎日楽しくやってたよ』
ひゅう、と生温かい風が肌を撫でる。その風の温度を噛み締めるように、そっと瞳を閉じた。
彼と道を違えてから10年。そして―――"あれから"1年の時が経った。まるで昨日のように思えて、けれども確かに時は経っていて。いつまでも感傷に浸っているわけにはいかないのに、どうしてもやっぱり、この蒸し暑い時期になると胸が苦しくなるのだ。
"―――どうかそのままで。"
10年前の彼の言葉が脳裏を過ぎる。
記憶の中の遠くなっていく彼の背中に、今でも瞳の奥が熱くなる。
あの日追いかけられなかった背中。
再びその背中を見つけて、そして、失った―――2017年12月24日 百鬼夜行