第10章 きみの呪いが解けるまで
『……一番におめでとうって言いたかったな』
ぼそ、と独り言を呟いてから、ナチュラルに自分の口から出てきた言葉に赤面した。なまえはギャーと小さく叫んでからバタバタと足をバタつかせながら赤い顔を隠すようにクッションを抱き締める。
『何言ってんだよ私!!』
そんな絵に描いたような恋する女の子みたいな行動をしていた、時だった。
ガチャ!と勢いよく部屋の扉が開いて、思わず飛び上がる。其処には息を切らした制服姿の五条が立っていて、なまえはこれでもかというくらい目を見開いた。
『さ、悟!?』
「っなまえ、早く準備して」
『え?』
息を切らしながら五条は土足のまま早足でなまえの部屋に上がってくると、ハンガーに掛けてある上着を取ってなまえにほい、と投げた。
『は、え、何!?』
「それ着て、早く」
『急になんなの…ていうか土足であがってくんな!』
「後で掃除してやるから今だけ許して。ほら、早く」
そういって五条は、同じくハンガーに掛けてあったマフラーを手に取り、なまえの首に巻いてやる。少し久しぶりに近くで見る五条の顔に心臓がどき、と音をたてたものだから、慌てて顔を逸らしたなまえはそそくさと上着に腕を通した。
そのまま五条に腕を引かれて、早足で高専を出れば、前に補助監督の運転する車が止まっている。そこに急いで乗り込ませられ、五条は運転手である補助監督に「なる早で」と偉そうに促した。
『え、何、今から任務!?』
「そんなわけないだろ」
『は、私用で車使っていいの!?』
「いーのいーの」
そう言って、五条は窓から流れる景色を眺めている。そんな五条に、なまえは続けた。
『ねぇ、どこ行くの?』
「ナイショ」
『教えてよ、やだ、私まだなんの準備もしてないのに』
なまえの言葉に、五条は隣のなまえに視線を向けると首を傾げた。
「準備ってなんの?」