第10章 きみの呪いが解けるまで
うるさくてしつこかった五条は、あの日以来ぴたりと静かになった。
あの日怒鳴り散らして突き放した事が効いたのか、はたまた懲りたのか、ただ単に忙しいのか。
彼は特級呪術師の中でもずば抜けており呪術界の最強であって、高専で油を売っていていい存在ではないのだから、忙しいのは当たり前だ。けれどここまでぴたりと静かになると、逆に怖い。連絡も無かったし、顔を合わせる事もないまま、12月6日、即ち五条の誕生日の前日を迎えてしまった。
なまえは何を用意するでもなく、普段通りに任務を終えて夕方過ぎ高専に帰宅した。硝子に相談しようと部屋を訪ねたが不在だったため、結局一人自室に戻ってきたのだけれど。
『……どうしよう』
もうこの時間から街に出掛けたんじゃ、どの店も閉まっているだろう。そもそも街に買い物に出かけたところで、何を買ったら喜ぶのかなんて見当もつかない。
そもそも、明日五条が高専にいるのかどうかも不明だ。連絡をして聞くのが手っ取り早いのだろうけど、なんだか自分から連絡するのは照れ臭い。いつもしつこいくらいに連絡をよこしてくる癖に、こういう時に限って五条はあの日以来、連絡ひとつ寄越さなかった。
あの日硝子と、五条について色々話をしてからというもの、自分の気持ちにじわじわ気づき始めて、余計に照れ臭かった。携帯を開いては閉じて、開いては閉じて、を何度か繰り返してから、結局携帯をぶん投げソファに寝転んだ。時計を見れば、彼の誕生日まで、あと3時間。