第1章 「嫌だって、言ったのに」【我妻善逸】
後日。
善逸には申し訳ないが、約束通り非番の宇髄さんと紅探しに街へ出た。
前に自分で買ったものよりもどこか大人っぽい、まるで花魁の美女が付けているような濃い色を選んでくれた。
「えぇ…私にはまだ早くないですか…?」
「大丈夫大丈夫、俺が言うんだから間違いねえよ。派手に似合ってるから安心しとけ!
それにあいつもこういうのの方が絶対喜ぶんだわ」
鏡に映る唇だけ妙に色っぽくなった自分と睨めっこ。不安になって宇髄さんに聞くと、にまにまと悪戯っ子のような楽しげな顔で任せろ、なんてべしべしと背中を叩かれた。
「あいつ?」
「こっちの話だ」
はて、なんのことやら。
紅を買ったついでに街をぶらぶらと歩いていると簪屋を見つけて、「これも買ってやるから貰っとけ」なんて黄色い蜻蛉玉が付いた簪を渡された。
あれ、なんかこの簪、善逸の瞳の色に似てるような。
「俺が買ってやったんだからちゃんと付けろよ?」
はっ、と宇髄さんを見上げると、やはり彼は悪戯っ子のように目を細めて端正な顔を楽しそうににやつかせていた。