第1章 「嫌だって、言ったのに」【我妻善逸】
「べ、別に!?禰豆子ちゃんの方がよっぽど似合うって思ってただけだしぃ!?」
「確かに禰豆子ちゃんの方が似合うかもねぇ。
でも顔真っ赤だよ?」
あわてて悪態をつき始める様子が面白くて新鮮で私はけらけらとお腹を抱えて笑った。
善逸はまさに典型的な男の子だ。
だって普段は男同然に扱っている女子でも、突然紅を差しはじめただけで顔を真っ赤にして照れ始めてしまうのだから。
「に、似合ってない…し…!!」
その場にうずくまり笑い出す私への抵抗だろうか。
ぎこちなく似合ってないと言い始める善逸。
似合ってないとすんなり言えないところに善逸の優しさというか気遣いを感じる気がしてそれもまた私を笑わせる要因の1つになった。
「えぇ~、宇髄さんは似合ってるって言ってくれたのに?…あははっ!」
紅を差した初日、偶然出会った宇髄さんに「派手に色っぽくなったじゃねえか!」と頭を撫でながら褒められたことを思い出して善逸に言い返した。
真っ赤な顔でおかしな表情をする善逸がおもしろすぎて、堪えきれず笑ってしまったけど。
「宇髄さん…!?」
「…え?あぁ、うん、そう、宇髄さん。
今度私に合う色見繕ってくれるって」
宇髄さんの名前を出した途端、今度は青くなり始めた善逸。なんだ、赤くなったり青くなったり忙しいなぁ。のそのそと立ち上がりながら返事をすると善逸から悲鳴が上がって吃驚した。
「宇髄さんがぁ…!?」
「え?なに…!?もしかして宇髄さんに紅選んで欲しいの…?遊郭潜入で女装してからそういう趣味でもできちゃったの…?」
いやまあ、大切な仲間の趣味ならたとえどんなものでも応援するし肯定するけど。
あ、だめだ。おかしな化粧を施されて有り得ないほど不細工になった善子ちゃんを思い出してまた笑えてきた。
「何笑ってんだよ!?」
「い、いや…善子ちゃん…を…ふふっ、思い出して」
「勝手に思い出し笑いするのやめてくれませんかねぇ!?ていうか、お前!ほんとに紅とか似合ってないから!宇髄さんに選んで貰う必要とか無いから!ぜぇぇーーーったい無いから!」
「えぇ…そこまで言う…?」
炭治郎くん。揶揄いすぎてしまったようです。
善逸は不機嫌な様子でずんずんと私の横を通り過ぎて行った。