第2章 「弟では、ないですね」【竈門炭治郎】
「た、た、炭治郎…くん?」
「……」
これは、どういうことですか?
誰か教えてはくれませんか?
私を後ろから抱き締めるような体制にしたと思えばそれかまったく動かなくなってしまった。
炭治郎くんはどうやら冨岡さんになってしまったらしい。何度名前を呼んでも返事が返って来ない。
とりあえず今の状況としては炭治郎くんが動く度に素肌が擦れてとんでもなく恥ずかしい。
それに、炭治郎くんとこんなことをしているというのは、なんというか〝イケナイこと〟をしている気がしてきていたたまれないのだ。
さて、どうしたものか…。
とは言っても、まさか乱暴を働いて炭治郎くんを押しのけるのも心が痛む私。
現状できることといえば呼び掛ける以外は無い。
まったく返事がないけど。
「ねぇ、炭治郎くん…?どうしたの…?」
ふと炭治郎くんのさらさらの髪が首に触れた。
とん、と彼の顔が肩に埋められたのだ。
やっぱり、今日の、炭治郎くんは、おかしい!!!
すりすりと彼が首元に擦り寄るので擽ったくて身を捩ってしまう。
それよりも、炭治郎くんはいったい何がどうしたというのか。大混乱の脳内とは裏腹に逆上せあがった身体では瞬時に反応することなんてできなかった。
「………んぅ、さん…」
「…う、うん…?」
「嫌、ですか…?」
「………ん?」
「こんな俺は、嫌いですか…?」
「へ……」
それってどういう…?
そう尋ねようとした瞬間。
ちゃんぷんと水面が揺れて、ぐるりと身体を回された。あまりに突然のことであっけなく手を離れた手拭い。かろうじて身体を隠していたものはふよふよ、水面を舞っていってしまった。
「ッ…!!」
羞恥心で炭治郎くんの顔を見れない。
手で胸やら何やら、とにかく隠せそうなところを覆いながら縮こまる。
どうしようどうしよう。
まわらない頭を必死になって回す。
ああ、どうしよう!何も解決策が見つからない!
後輩相手に!私はなんて醜態をさらしているのだろうか!たしかに根本を辿れば私が悪かったのかもしれない、でも、それでも…!
「…ッ ! た、炭治郎くん…!」
向かい合わされたまま、ぎゅ。と固く抱きしめてくるこの〝 男 〟は。
ほんとうにあの可愛らしい炭治郎くんなのだろうか?