第2章 「弟では、ないですね」【竈門炭治郎】
「うぅ…ごめんなさいさん…。
俺があそこで頸を斬れていれば…」
「気にしない気にしない!怪我なく無事終わったことの方が大事よ!」
夜がとっぷり更けた頃。
あれだけ早く終わらせようと意気込んでいた気合いはどこへやら。ようやっと任務を終えた私たちは近くにあった藤の家にお邪魔させて貰うことにした。
「部屋は一緒で大丈夫だよね?」
「えっ!?いや駄目です!絶対に駄目です!」
「あ、そっかお年頃だもんね?恥ずかしいか」
「…いや、そういうわけじゃ…」
弟と同じ感覚で同室にしてもらおうとすると、慌てた炭治郎くんがぶんぶんと赤い顔で首を横に振った。
お年頃だもんねぇ、と微笑ましい気持ちで頭を撫でると炭治郎くんは少しだか嫌そうな顔をした。
思春期、というやつだろうか。
子供扱いがやけに気に触る時期ってあるよねぇ。
炭治郎くんもとうとう思春期か。
あまりに温厚で良い子だからそんなものないと勝手に思っていたよ。
温泉があると藤の家の方が教えてくれたので、羽休めのために入ろうとお風呂に向かう途中の廊下。
一歩前を歩く炭治郎くんに弟の姿を重ねしみじみとした気持ちになる。
可愛がっていた弟に「姉ちゃんともう風呂入ってやんないからな!」と声高々に宣言されたことを思い出してなんだか寂しくなってきた。
「ふふっ、ねぇ炭治郎くん」
「はい?」
男湯、女湯と書かれた暖簾の前で立ち止まり、炭治郎くんを呼ぶときょとん?と首を傾け「どうかしましたか?」と言う。
あまりに純粋なその瞳にいっとう悪戯心が湧いて、私はにやりと怪しく笑い彼の耳元で囁いた。
「一緒に入ろっか?」
「………………いっしょ…に!?」
「ふふ、冗談だよ。弟と昔一緒に入ってたなぁって思い出してね。ごめんごめん。じゃあごゆっくり」
一瞬にして顔を真っ赤に染め上げた炭治郎くん。想像通りの反応に満足して、ひらひらと手を振り女湯の暖簾を押し上げた。
まさか炭治郎くんがあんなことをするなんて。私はこのときの発言を数分後に後悔することになる。