第8章 港町フォードス
やっと店が決まって、ちょっと遅いランチにありつける。
この店自慢のバトルシザース料理がテーブルに並んだ。
バトルシザースのあの硬い殻は茹でると簡単に割れるそうだ。
むき身の脚を輪切りにしたステーキ、解した身と野菜に蟹味噌を混ぜたサラダ、海老や魚との鍋、〆は蟹の炊き込みご飯だ。
正に蟹尽くし、しかも脚一本で、これらを一人前作れると言う。
一匹は高額だが、八人前作れるなら、かなりお得な食材かも知れない。
しかも、超美味いとくれば名産になるのは当然だ。
「この蟹、ローズの店でも出せないかな?」
「それは無理よ」
間髪入れずにティアナが否定した。
「なんでだよ?」
「ここだけじゃなく名産と言われてる物は他の街で売ることは出来ない法律があるんです」
シャルルが答えた。
「そう…、土産で買って帰るのは良いけど、他所で売ると巨額な制裁金に懲役五年の重罪よ」
思ったより厳しい処罰だ。
確かに名産はその土地にあるから良いんだよな。
ネットの様にどこの名産でも手に入るなんて有り難みがない。
俺はこっちの世界の方があってるみたいだ。
バトルシザース料理を堪能した俺達はフォードスを後にして、グランロールスに戻った。
役所にバトルシザースを届け、報酬を受け取り、初依頼は終了した。