第8章 港町フォードス
賑やかな商店街には、魚介類の専門店だけじゃなく、レストランや土産物屋も建ち並ぶ。
「やっぱり蟹かな?」
「そうですね、蟹ですよね!」
ティアナとシャルルは蟹を食べさせる店を探していた。
(あんだけ蟹と格闘したのに、まだ蟹と格闘する気かよ…)
二人はああでもないこうでもないと言いながら店を選んでいる。
周りを見ると蟹とかバトルシザースの看板が掲げられている。
フォードスの名産だから探す必要はなさそうだけど…。
「ここはちょっと高いわね」
ティアナは値段にこだわっている様だ。
「手頃な価格ですが、お洒落じゃないですね」
シャルルは店の雰囲気にこだわっている様だ。
(こりゃあ、決まらねぇぞ)
なかなか二人の意見が合わない。
ここで一つ気が付いた。
「ちょっといいか…
俺、金持ってないぞ」
こっちの世界に来て、ローズの店に居候しているので生活には不自由はない。
が、それは店の手伝いで相殺してるから給料は貰っていない。
冒険の依頼も今回が初めてで報酬もまだない。
所謂、文無しなのだ。
「分かってるわよ
とりあえず貸しね
あっ、今回は利子付けないであげる」
ティアナがニコッと笑った。
(普段は利子付けるって事か…
本当に金の亡者なのか?)
俺は少し不安になりつつ二人の後を追った。