第1章 異世界は唐突に!
「小僧!次行くよ」
ローズに呼ばれ、ティアナと別れた。
「はいはい」
「はいは一回でいい!」
今、ローズがフライパンを持ってなくて良かったと思った。
市場で売ってる食材は元の世界と同じ様な物もあれば、明らかに怪しい物もある。
それでも野菜は野菜、肉は肉、魚は魚と呼ぶ。
たぶんこの世界に飛ばされた時に、こっちの神様が言葉や日常的に使う物の名称を脳内変換してくれたんだろうと勝手に思っている。
どう見ても外国にしか見えない世界で日本語が使えるはずはないからね。
俺にここで暮らせと、こっちの神様が決めたって事か…。
「はぁ…」
「溜め息吐いてる暇ないよ!」
ローズは次々といろいろな食材を買っては俺に渡す。
大量だったり重い食材は店に直接納品されるそうだが、ちょっとした食材や調味料等は持ち帰るしかない。
「どんだけ買うんすか!?」
「まだまだ、これで半分だよ」
俺の両手は買物袋で一杯になっていた。
昨日、ローズを天使と思ったのは、どうやら思い違いだったようだ。
「さぁ次行くよ!」
「ひぇ~」
本当にこの人、87歳なのか?こっちの人は長寿なのか?それとも実は人間じゃないのかも…。
「何か言ったかい?」
「いえ、何にも…」
やっぱりこの婆さん、ただ者じゃないな。