第1章 異世界は唐突に!
「小僧!いつまで寝てんだい!」
突然、叩き起こされた。
「うわぁっ!な、なんだぁ!?」
一瞬何が起こったのか分からなかった。
「起きたんなら、さっさと飯食いな」
「あっ…」
夢なら良かったと心底思った。
俺は異世界に迷い込んで、ローズの店に転がり込んだんだ。
「ごちそうさまでした」
「小僧、飯食ったら仕入れだよ」
どうやらローズは俺の事を『小僧』と呼ぶことに決めた様だ。
朝食を食べ終えると、ローズと共に市場へ向かう。
街中を見回すと、道路は石畳で中世ヨーロッパ風の建物が建ち並ぶ。
行き交う人は、普通の人間だけじゃなく俺みたいな獣姿や爬虫類の様な姿の人もいる。
「へぇ~本当に獣人がいるんだな」
これなら俺の姿も目立たないか?、と思ったがそうでもなかった。
「あなた、ローズの知り合い?」
市場に着くとローズに声を掛けていた女性が俺にも話し掛けてきた。
「あぁ、昨日から世話になってるんだ」
「へぇ~、その見慣れない服は異国の人?」
「ま、まぁそんなところかな…あははっ」
俺は笑って誤魔化すしかなかった。
「私はティアナ、これでも猟師なのよ!」
ティアナと名乗った赤毛の若い女性は弓を背負っていた。
なるほど、捕った獲物を市場に卸しに来たのか。
「俺は…猫左衛門…
ローズの店で手伝いする事になった」
「…猫…左衛門さんね
ローズの店にはよく出入りするからよろしく」
やっぱり思い付きで名乗るんじゃなかったと後悔した。