第6章 銀に釣られて…
ティアナは蛇の頭が届かない所から矢を放っていた。
「ティアナ!無事かっ!?」
「大丈夫よ!」
胴体は一つだから頭はティアナの所まで行けない。
俺が近づくのに気付いて矛先を俺に変えた。
「やべえ!さっきは無視したのにっ!」
俺は後ろから近づき一気にとどめを刺すつもりだったが、予定が狂った。
しかも、他の頭がやられた事を学習している様で頭を左右に揺らしながら攻撃してくる。
「こいつ、意外と頭良いのか?」
巨大な口に鋭い牙、近くで見るのは御免被りたい。
「小猫ちゃん!加勢するわよ!」
二つ目の頭と戦っていた(ガブリ)エルが加わった。
「ラッキー!
エル!後は任せた!」
俺はダッシュで「回れ右」した。
「えっ!?ちょっと小猫ちゃん!!??」
(ガブリ)エルには悪いが、多少訓練したとは言え、単なるフリーターが正面から戦うなんて、やっぱり無理。
『なんだ小僧、逃げ回るつもりか?』
「まぁね、撹乱するくらいなら出来るんじゃねぇの」
俺はわざと蛇の視界に入る様に動き回る。
ただ走り回るだけなら、この蛇より遥かに速い事が分かった。
小回りも効いて、正に猫並。
「こっちだ!バカ蛇!」
たまに止まって蛇を挑発する。
動き出すと身体が軽い。
多少の高さなら駆け上がれるくらいだ。
「エル!今だ!」
俺を追い掛けて蛇が頭を上げた。