第1章 異世界は唐突に!
俺は腹が満たされた所で、老婆に聞いてみた。
「あの~ここは?」
「おかわりは良いのかい?
もうすぐ店が終わるから、ちょっと待ってな」
「…店?」
よく見ると老婆の向こう側は賑やかで何人か人影が見える。
一息入れると自分の格好を改めて見る。
着物に袴と刀、腕だけじゃなく身体中に薄茶色の毛並みと尻尾。
部屋にある鏡に恐る恐る近づく。
覚悟を決めて鏡の前に立った。
「っ!」
絶句とはこの事か…。
鏡に写し出された顔は、どう見ても猫にしか見えなかった。
しかも、あの時、俺に飛び込んできた猫の顔によく似ている。
「…侍の格好した猫ってなんだよ!?」
俺は愕然とした。
「どうしたんだい?
まだお腹空いてるんじゃないのか?」
老婆の声で我に返った。
「あっ、美味しかったです
ごちそうさまでした!
お代は…」
まず料理の御礼をした。
「よしとくれ!行き倒れから金取るほど落ちぶれちゃいないよ
それよりあんた、何で店の前で倒れてたんだい?」
「…店の前で行き倒れ?
実はここまでどうやってきたか分からないんです」
背筋はシャキッとしているが、小柄で白髪なその見た目からは想像出来ないハキハキとした喋り方だ。
「まぁ、いいわ
…見たことない格好してるけど、国はどこだい?」
「国?日本ですが…
って、ここは外国ですかぁ!?」
俺は更に愕然としてしまう事になった。