第1章 異世界は唐突に!
「…あの猫、大丈夫だったか?」
猫は見当たらなかったが、周りを見回し異変に気付いた。
「…野原?…どこだ、ここ?」
仕事帰りにこんな野原はなかった。
遠くに夕陽が綺麗に見える。
しかし、一面の草原、近くには建物の影も形もない。
あまりの景色の変化に自分の変化に気付くのが遅れた。
「なにぃぃぃ!」
着物に袴、腰にはずしりと重い刀が差してある。
「さ、侍?」
フリーターって仕事柄、和服どころかスーツすら持ってもいない。
それなのに何でこんな格好をしてるんだ?
「…夢?」
ベタだが頬をつねってみた。
「え~っ!?」
痛さより更に驚くべき事実を突き付けられる。
「髭?」
顔を触る。
顔中に毛が生えている。
袖口から覗いた腕にも茶色い毛並みが見える。
「…毛?…毛皮?
…な、…なんじゃこりゃあぁぁぁ!」
おもいっきり叫んだ。
茫然自失となった俺は、遠くに見える明かりだけを目指しフラフラと歩き出した。
しかし、街に着いたまでは覚えているが、すぐに気を失ってしまった様だ。
気が付くと良い香りがしていた。
と、同時に腹が鳴る。
「…飯?」
起き上がると目の前に料理があった。
何も考えずに食べはじめた。
「おやおや、そんなにお腹空いてたんだね
料理は逃げやしないからゆっくり食べな」
「うっ…」
喉に詰まりそうになったが、声のする方を見ると老婆がフライパンを振っていた。