第11章 スカーレットと新作料理
ダットンの工房に着くと(ガブリ)エルと目慣れない赤いローブを纏った人がいた。
「二人とも遅いわよ!」
「文句ならディアスに言ってくれ!
それより、そっちのローブの人は?」
フードを被って背中を向けているから、男か女かも分からなかった。
「この人は…」
(ガブリ)エルが紹介しようとしたが、本人が振り向きフードを外した。
「私はリナ・スカーレットと申します
この度は、私の依頼を受けて頂きありがとうございました」
このグランロールスに四人しかいない魔導師の一人として名高いスカーレットだった。
見た目は二十代後半くらい、肩辺りでカットされた漆黒の髪が印象的で、華奢だが凛とした佇まいは神秘的でただ者ではないと思わせる。
「う~ん、美人だ…」
俺はポロッと本音が漏れてしまった。
ドスッ!
刹那、ティアナの肘鉄が脇腹に突き刺さる。
「うっ!…仕方ないだろ、正直な感想だ」
「これだからオジさんは!」
これにはみんな苦笑いしかなかった。
自己紹介を済ませてダットンの工房に入った。
「遅せぇぞ!
もう、粉砕は終わっちまったよ」
ダットンはギラドラスの青い石を砕いた青い粉が入った容器を俺達の前に出した。
「まぁ思ったより細かく砕けたから、魔法銀にも合わせられそうだな」
ダットンはそのゴツい手で青い粉を掬うと指の間からさらさらと零れ落ちる。
確かに砂の様に細かくてさらさらだ。
「これを溶かした魔法銀に混ぜれば他の金属とも加工出来るのか?」
俺にはいまいち理解出来ないが、ダットンのニヤついた顔から間違いなさそうだ。
「合金っていうのは溶かした幾つかの金属を混ぜ合わせて作る…
だが、魔法銀は他の金属と混ざらねぇんだ
この青い粉が結合材になれば魔法銀の合金が出来るんだよ
…まぁ、やってみねぇと分からんがな」
ダットンはそう言いながら親指を立てる。